TOP2014年 第5回 高校生の建築甲子園 審査結果発表
高校生の「建築甲子園」


建築甲子園表彰式

2014年第5回高校生の建築甲子園表彰式(2015年1月19日実施)

同上(動画)


高校生の「建築甲子園」


2014年 第5回 建築甲子園審査総評

片山和俊


思わずホッとした。

今年も建築甲子園の審査を迎えたが、実は心配していたというのが本心である。今回までの5回同じテーマを繰り返してきた試みを面白いと思い、自信を持ちながらもマンネリ化を心配していたからである。が、審査会場に並べられた作品群を見て一安心、例年に匹敵する力作が並んでいた。それにしても時が経つのが早い。四季の変化に加えて、オリンピック招致成功や国立競技場の建替え問題、広島の地滑りや2度に亘る列島を縦断する超大型台風の来襲、長野北部地震、木曽御嶽山の噴火などの自然災害が続き、その間に大小の出来事や事件が起きて2014年もめまぐるしく時が過ぎた。

ゆっくり地域の暮らしを考えることなど吹き飛ばされそうな事態の連続だが、その度にそれを乗り越えるには“地域のくらし”しかないと思い知らされる。普段からの地域活動の根や芽を育て、ワクワクするような試みや取組む地域の人々の生き生きとした暮しを守っておくことこそ肝要である。

各校の試みは、いずれも身近な環境から拾い上げた機知に富んだものだが、今年はその中に共通する常識、空気感のようなものが広がっているように感じられた。最近お題目のように繰り返される少子高齢化の進行、人口減少、住宅総数および空き家数の増加などの現況分析という全国を覆っている暗い雲だ。北は青森から神奈川、名古屋、京都、和歌山、南は熊本県までシェアハウスの提案はその状況からの素直な解答の一つである。大都市からの参加も可能であった。今回はどの案も勝ち進めなかったが、もう一工夫を期待したいテーマだ。

また準優勝の地域産業に軸足を置いた群馬桐生“買場紗綾市活性化計画”の試みは、よくある計画の一つだが、誌面に納まり切れないほどの表現に強い意欲を感じた。同じような提案埼玉“春日部藤っ子が集うあかり商店街”のワゴンや岐阜“Knit the City”のボックス活用も面白い提案だったが、各地で行われているイベントと重なり準優勝案に及ばないと判断された。さらに優勝の静岡”めぐみの巡り“に似た山村の計画、長野県飯田“つながりの里”の醸し出すほのぼのとした情景に強く惹かれたが、未来を開くにはもうちょっとの冒険が必要と思われた。

全体的に見ると今回は東から北に意欲的な作品が多く見られ、西から南にかけては元気がないように見えた。その要因は、後者地域の提案が個の建築として工夫されているのだが、単体として完結し地域への広がりが足りないところである。課題分析を地域からはじめているのだから、提案の中に地域へ返す要素が少ないと弱い。私には尻切れトンボのように見えた。

今回審査委員が半数変わったが、審査自体は順調に進んだ。決勝で負けた2校、北海道の“一致団蹴”と奈良の“秋篠エコビレッジ”は、一方は北海道の広大な風土らしさ感じさせ、他方は伝統に連なる時間系と集落構成を創出させて甲乙つけがたく、捨てがたい夫々の魅力を評価しようという審査委員会の総意で、事業委員長賞を設け賞することとした。

2014年 第5回 高校生の建築甲子園 優勝

エントリーNo.18 静岡県立科学技術高等学校「めぐみの巡り」

選手/男子5名、女子7名

はじめは頼りなげに見えた。手書きの線も細く色使いも地味で薄く控えめ、敷地も山奥で強い主張がどこにも感じられなかった。が、作品を読み込んでいくうちに、普通の夫婦が自然の中で身直にある恵みを丁寧に掘り起し、巡らせることで豊かな暮しを作り出していく、いや作り出して行けると感じさせる提案と分かってくる。敷地に水を巡らし、道を巡らしわさび田をつくり、食を巡らし人と人のつながりから、経済が巡る。やがて時が巡り地域が持続していく。

逆説的な言い方になるが、この計画は一度に強いインパクトを与える提案ではないところに魅力がある。少しずつ噛み締めている間に美味しさが分かってくる料理に似て、考えや主張がじわじわと浸透してくる作品である。小さなスケールやアイディアでも筋を通して集めると、独特な魅力を創出できることを示している。そして一見バラックに見える1室を基本とした群落も、その佇まいに山間の隠れ里のような雰囲気が感じられ、訪ねてみたいという衝動にかられた。才気走っていないところに惹かれるのだから不思議である。

審査も最終段階になり審査員夫々が自分の評価を振返ってみたら、この作品に対して全員が高評価を与えていたことが判明した。全勝優勝に近かったことを付け加えておきたい。2回目の優勝おめでとう。(片山)

2014年 第5回 高校生の建築甲子園 準優勝

エントリーNo.10
群馬県立桐生工業高等学校「売るのは文化!」「遊び心とお祭り気分!」買場紗綾市活性化計画案

選手/男子2名、女子1名

今の紗綾市に不満はない。ところが、何となく物足りなさを感じている。

モヤモヤとはっきりとしないものが多くの言葉になってしまい、はち切れんばかりの強い表現になったようだ。その原因を探る調査が続く。猥雑で混雑した空間のせいか?かつてあつた「水路」が消えたせいか?日常とイベント開催時の人の変化のせいか?などなど。かつての賑わいを日常のなかで取り戻し、若者を呼び込める「策」はないか?防火壁として長く続く象徴的なレンガの壁とをヒントにその活路を見いだした「案」である。現駐車場の立体的活用によるオープンスペースの捻出や通りをオーバーハングしたブリッジのステージ化によって、ヒューマンレベルの空間を豊かにした。共通なのは、ノスタルジックな素材のレンガを基調にした床舗装だ。惜しむらくは、露店とライブの<非日常>と大きなギャップとして捉えられていた<日常>のしつらえが「駐車場」としての利用ということだけしか語られていなかったことだ。<日常>の姿が今とどう変化しているのかを見たかった。ともかく、準優勝おめでとう。次回に期待したい。(森崎)