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番号:【2013.03-005】

情報:「高力ボルト摩擦接合(ハイテンションボルト接合、HTB接合)」
発信:建築技術等部会 松岡浩一 所属(エスティーアール構造設計)

高力ボルト(以下HTBと呼ぶ)のJIS制定は1964年なので今年で50年目となる。

スカイツリーが東京の塔の名所になりつつあるが、これまでは東京タワーが塔の代表であった。

その東京タワーはリベット接合といって、鋲を真っ赤に熱してカシメる接合方法を当初は採用していた。しかし、タワーの工事が徐々に高くなるにつれて、当時の東京都建築局の人は、『もし、真っ赤な鋲が事故で東京の上空から落ちた場合は大変なことになる』と非常に心配した。当時、HTBが出始めた頃であったので、建築行政では認可していなかった。東京タワーの安全な建設にはHTBが適切であるとの判断から、東京都は建設省にお伺いをたて、東京タワーは建築物ではなく、工作物であるとの回答を得た。このため規制の対象から外れ、途中からHTBが採用された。*1

実際は一部に展望レストラン等があるので、工作物としたのは、役所の立場からすれば勇気ある英断であった。本来の行政はこのようにした方がイキだと思うが、法律論から判断すると、難しい。

HTB接合は東京タワーで採用された後に、急激に普及していった。

鋼構造物は非常に高い靭性があるが接合部が弱点となりやすい。工場での溶接接合は姿勢が正しくとれ(下向き溶接)、安定した接合が得られやすい。

一方、工事現場での接合は天候に左右され、溶接姿勢が安定しない為に、溶接接合が敬遠され、現状では高力ボルト摩擦接合が90%以上採用されている。溶接の試験は超音波探傷試験等で確認できるが、高力ボルト摩擦接合は施工時の管理でしか、耐力確認が保証されない。

(社)日本鋼構造協会では建築高力ボルト接合管理技術者認定試験を行っていて一定の施工管理技術者を認定している。しかし、この試験の認定者でないと施工してはいけないという法律はない。

つまり、施工会社が任意で品質管理を行う為の認定試験となっている。

工事現場での鋼構造物の接合の殆どが高力ボルト摩擦接合であるという現実に対して、管理の状態が自主的なものとなっていることは問題である。設計監理者が施工現場に立ち会うのは極一部で大半が現場管理者に委ねられている。

ところが、現場管理者も施工工程を100%立ち会っているわけではないので、事実上は現場従事者の技量に任されるのが実情である。資格が義務付けられているわけではないが、現場管理者も設計監理者も積極的に建築高力ボルト接合管理技術者認定試験の合格者にのみ施工を任せることにした方が安定した施工結果を得られる。この辺の実情は建築士といえども認識している人は少ない。

高力ボルトはある年代層より上(概ね60才)はコウリキと呼び、それよりも下の年代ではコウリョクと呼んでいる。私が高力ボルト協会へ質問したところ、『一般的には,コウリョクと呼んでます。ふるい方は、コウリキと呼ぶこともあります。 いずれにしても通りますが確たる根拠は有りません。』との回答であった。高い力学的特性のあるボルトの意味からはコウリキであり、高張力のボルトの意味からはコウリョクであるが、時代の流れとしてはコウリョクに収束しそうである。

高力ボルト摩擦接合は材料同士の摩擦抵抗で接合するもので、重要なことは滑り難い摩擦面処理を保持させていることの確認と、その摩擦面を押さえつける高力ボルトの張力導入が確実に行われていることの確認できる。具体的には、接合接触部に赤錆を発生させるかまたはショットブラスト処理(接合部表面に微細な鉄球を満遍なく打ち付け滑り難い肌荒れをさせる処理)を行うことの確認である。

赤錆を発生させるのは自然現象なので、そのコントロールは難しい。

錆が多くなり浮き錆にすると逆効果で耐力は保証されない。工場施工から現場建て方までの工期が短い場合は、赤錆が得られないので錆発生促進剤を塗布するケースもある。

錆発生促進剤で塩分を多く含んでいるものは、その使用管理も重要となる。ショットブラスト処理を行っても、品質監理を徹底していない工場では、使用し過ぎでヘタレた鉄球を交換せずに長期に使用し接合表面を適度な肌荒れにできていない場合もある。赤錆にしろ、ショットブラスト処理にしろ、基準はあるものの、その表面の適否は目視に拠るので管理者及び監理者の知識は確かでなければならない。

HTBの張力導入管理はボルト締め付けトルクで確認する。六角HTBの場合はトルクレンチで確認するが、最近は大半がトルシャ型のHTBが使用されている。

トルシャ型は一定のトルクが加わるとボルトの先端が切断されるようになっているので張力導入確認が容易である。

しかし、ボルト軸部に一定のトルクが加わった状態にする為には、HTB・ナット・座金の保管状態や、共回り防止確認に対する一次締め後のマーキングによるナット回転量の確認を行わなければならない。

また、近年は亜鉛メッキ処理をした鋼構造物も多く制作されていて、HTBも亜鉛メッキが施されている場合がある。この場合も、摩擦面処理と張力導入との管理は重要である。一般的に亜鉛メッキ処理の場合は接合耐力が20%程度低下する。

亜鉛メッキの場合、トルシャ型のHTBは錆の問題から使用されない場合が多く、必然的に六角HTBを使用することとなり、トルク管理はトルクレンチにて行うことになる。

HTBは高張力の応力を加えているので、応力の緩み(レラクゼーション)が起こらないにしなくてはいけない。その為に、HTBに溶接する等の熱を加えるのは厳禁である。

建築士は正しい知識の基に高力ボルト摩擦接合を使用していかなければならない。

*1 このエピソードは「東京タワーは曲がっていなかった」豊島光夫著:文芸社発行を参考とした。